ほっとホスピタル 病と健康
ほっとホスピタル病と健康TOP
第37回 末梢動脈疾患
第36回 脳卒中予防のための血圧管理
第35回 尿路結石症
第34回 骨粗しょう症
第34回 大腿骨近位部骨折
第33回 スキン‐テア(皮膚裂傷)
第33回 低温熱傷
第32回 そけいヘルニア
第31回 めまいを起こす病気
第30回 お薬との上手なつきあい方
第29回 帯状疱疹
第29回 足白癬・爪白癬
第28回 夏風邪
第28回 高山病
第28回 熱中症
第27回 足の病気
第26回 心不全
第25回 シェーグレン症候群
第24回 認知症
第23回 更年期障害
第22回 くも膜下出血
第21回 ウイルス性肝炎
第20回 心筋梗塞
第20回 狭心症
第19回 糖尿病の注意点
第19回 食後高血糖
第18回 肌のトラブル
第17回 前立腺の病気
第16回 脳梗塞
第15回 睡眠時無呼吸症候群
第14回 ピロリ菌
第13回 腸炎
第12回 スポーツ時の脳振とう
第12回 高齢者の慢性硬膜下血腫
第12回 子どもの頭部外傷
第11回 高血圧
第10回 口腔ケア
第9回 不整脈
第8回 消化器内視鏡検査でわかること
第7回 男性不妊症
第6回 肺炎
第6回 感染性胃腸炎
第6回 インフルエンザ
第5回 糖尿病
第4回 乳がん
第3回 野球肘
第2回 脳卒中にならないために
第1回 失神

第30回 お薬との上手なつきあい方

薬の服用

2018.9.11
時間守り規則正しく かかりつけ薬局を持つ

【相談者】
 Yさん 80歳女性。複数の医療機関を受診し、何種類もの薬を飲んでいます。服用時間がよく分からないので教えてください。また、薬について気軽に相談できるところはありますか?

 病気をいろいろと抱えている高齢者は少なくありません。その場合、複数の薬を飲み、服用期間も長くなりがちです。間違った飲み方をすると、効果が弱まったり、思いもよらない副作用が表れることがあります。例えば眠気や喉の渇きといった軽いものから、アレルギーの一種であるアナフィラキシーなど重い症状までさまざまです。

■タイミングは?
 一つずつでは問題がなくても、複数の薬を一緒に飲む場合、飲み方によっては薬と薬がくっ付いて体の中に取り込まれなかったり、薬が体の外に排出されるのを邪魔したりすることがあります。また、内服薬だと、服用するタイミングは食事と関係していることが多く、胃の内容物によって薬の吸収が変わり、空腹時に飲むと胃に負担をかけるケースがあります。

 それを避けるために、食事の前や食事の間などに薬を服用します。このような意味からも薬の服用時間を守り、規則正しく飲むことが大切です。

服薬のタイミング

■対策は?
 薬をいくつか飲んでいる人、医療機関を複数受診している人、健康食品やサプリメントなどを使用している人は、医師、薬剤師に相談しましょう。

 また近年、院外処方せんが普及してきています。そこで、普段から何でも相談できる「かかりつけ薬局」を決めるのもよいでしょう。

 かかりつけ薬局は、皆さんが飲む薬を薬局一カ所でまとめて管理します。複数の医療機関から同じ薬や反対の作用を持つ薬が処方されていないかをチェックし、副作用が出てせっかくの薬の効果が弱くなることを未然に防ぎます。

 処方せんによる調剤だけではなく、市販薬、サプリメント、健康食品の相談をすることもできます。かかりつけ薬局を持たない方は、「お薬手帳」を活用しましょう。お薬手帳は、処方せんを持って行った調剤薬局でもらえます。最近では、スマートフォンで利用できる電子版もありますが、富山県では、まだまだ普及が進んでいないのが現状です。

■お薬手帳とは?
 お薬手帳は、服用・使用している薬を記録するための手帳です。病院、診療所、薬局に行くときには必ず持って出掛けてください。薬局ごとに持つのではなく、1冊にまとめることをお勧めします。薬に関するすべての情報が一元化され、医師や薬剤師に情報をうまく伝えることができます。

 薬局では薬剤師が手帳を確認して、飲み合わせや薬の量が適切であるかをチェックします。そのためにもご自身で購入した市販薬や健康食品、サプリメントなどもお薬手帳に記入しておくことが望ましいでしょう。

 手帳を活用することで、複数の医療機関でもらった薬の管理がかかりつけ薬局と同じようにできます。困っていること、不安なこと、気になることなど、なんでもお薬手帳にメモする習慣が、みなさんの健康を守ることにつながります。

お薬手帳のメリット




薬の飲み合わせ

2018.9.18
作用・効果に悪影響も お薬手帳活用を

【相談者】
 Iさん 71歳女性。栄養補給や健康維持のため、数種類のサプリメントや健康食品を使用しています。病院で処方された薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?

 最近の健康ブームで、いろいろなサプリメント、健康食品を服用する機会が増えています。サプリメントや健康食品、食べ物の中には、飲み合わせによって薬の効果を変化させるものがあり、注意が必要です。

■注意点は?
 どんな組み合わせに良くない影響があるのか、少し紹介します。

(1)ビタミンKを多く含む食品(納豆など)
 血栓の生成を防止する作用を持つワルファリンを服用している場合、ビタミンKの多い食品を取ると、その作用を弱めてしまうので注意が必要です。納豆にはビタミンKや、腸内でビタミンKを作り出す納豆菌が多く含まれているからです。クロレラ食品や青汁も避けた方が良いでしょう。同じ大豆製品の豆腐やみそに含まれる量は多くないので問題はありません。緑黄色野菜にも含まれますが、1日の摂取量が多くなければ(小鉢程度)影響はわずかです。

(2)セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)を含む食品
 サプリメントとして用いられているセントジョーンズワートは、肝臓で薬を代謝する酵素を誘導し、薬の効果を弱くしてしまうことがあります。ワルファリンや免疫抑制剤(シクロスポリン)、強心剤(ジゴキシン)、抗HIV薬(インジナビル)、テオフィリンを飲んでいる場合は注意してください。また、新しい抗凝固薬であるダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンは、血液を固まりにくくする作用を弱めてしまうことがあります。

(3)グレープフルーツ
 血管を広げて血圧を下げるカルシウム拮抗薬は、グレープフルーツと併用すると薬の効果が強くなり、血圧が下がり過ぎてしまうことがあります。これはグレープフルーツに含まれる成分が薬の代謝酵素の働きを妨げ、体内での薬の濃度が上がるためです。他にもグレープフルーツとの併用を避けた方がよい薬は多数ありますので、服用前に薬剤師に相談されるとよいでしょう。オレンジ、レモン、みかんなど他のかんきつ系の果物では問題ありません。

(4)牛乳
 化膿を抑える薬である抗生物質の一部には、牛乳と一緒に飲むことで薬の吸収が低下して、水に比べて50%ぐらいに効果が弱まることがあります。他にも一部の便秘薬や胃腸薬の中には牛乳と一緒に飲むと悪い作用が出る場合があります。

(5)カフェイン
 せき止めに含まれるテオフィリンは、カフェインを多く含む飲み物と一緒に飲むと薬の作用が強まり、震えや吐き気などの悪い症状が出ることがあります。

飲み合わせのよくない主な薬と食品

 内服薬の注意事項に「お水か白湯で飲んでください」と書かれているのは、薬の働きに影響を与えないためでもあります。薬を飲んでいても知らず知らずのうちに薬の効果を下げ、思いもよらない副作用が出ることもあります。また、水なしで錠剤やカプセル剤を飲むと、食道に引っかかったり、くっついたりしてその場で溶けてしまい、食道に炎症を起こすこともあります。

■対策は?
 今回紹介した以外にも飲み合わせには気を付ける必要があります。かかりつけ薬局やお薬手帳を効果的に利用し、普段使用している常備薬やサプリメントなどもお薬手帳に記録しておくと便利です。薬局の薬剤師に服用している薬との飲み合わせをチェックしてもらうことでより安全性が高まります。


ジェネリック医薬品

2018.9.25
先発医薬品より安価 飲みやすく改良

【相談者】
 Hさん 72歳女性。最近、ジェネリック医薬品という言葉をよく聞きますが、どんな薬ですか? 品質や安全性について教えてください。また、ジェネリックに変更した後でも、前に使っていた薬に戻すことはできますか?

■どんな薬?
 薬には、新しく開発された「先発医薬品」と呼ばれるものと、特許期間が切れてから初めて発売される「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」があります。

 ジェネリック医薬品は、厚生労働省の許可を得て作られます。開発期間も短く、開発費用も格段に安いため、先発医薬品に比べて3~7割の価格に抑えることができます(図1)。

図1 先発医薬品とジェネリック医薬品の違い

 薬の製法特許・製造特許ごとに添加物や作り方が異なるため、形、味、色などが違う場合もありますが、厳しい試験によって、先発医薬品と同等の安全性、有効性が確認されています。また、ジェネリック医薬品の中には、薬の小型化、剤形・味の改良、錠剤やシートの表示の改善などで、先発医薬品より飲みやすくし、飲み間違いを防ぐ工夫をしているものがあります(図2)。

図2 新薬を改良したジェネリック医薬品

 まだ数は少ないですが、先発医薬品と原料・添加物・製法などが全く同一の「オーソライズド・ジェネリック(AG)」と呼ばれるものもあります。これならジェネリック医薬品が不安と思われる方も安心できるのではないでしょうか。それでも「以前に飲んでいた薬の方がいい」と思ったら、医師に相談してください。ジェネリック医薬品に変更した後でも先発医薬品に戻すことができます。

■処方は?
 全国的に院外処方せんが普及してきました。まずは、医療機関の医師に相談してみましょう。自治体や健康保険組合から発行されている「ジェネリック医薬品お願いカード」を使い、医師に相談するのも方法の一つです。院外処方せんの場合は、薬一つ一つに、ジェネリック医薬品へ変更可能なのかを医師が判断します。院外処方せんの「変更不可」の欄に「×」または「✔」の付いていない場合や、薬の名前が一般名(有効成分名)で書かれている場合はジェネリック医薬品に変更できます。

 しかし、ジェネリック医薬品を希望しても変更できない場合もあります。

(1)先発医薬品の特許期間が切れておらず、ジェネリック医薬品がない。
(2)健康保険で認められている適応症が異なる。
(3)治療上の理由によりジェネリック医薬品に変えづらい。
(4)調剤薬局にジェネリック医薬品を常備していない。

 などがあります。

 希望するジェネリック医薬品がなければ、処方してもらうことができません。そこで薬のことは何でも相談できる、かかりつけ薬局を持つことをお勧めします。先発医薬品とジェネリック医薬品を上手に利用し、皆さんの健康を守る方法として、かかりつけ薬局やお薬手帳を効果的に活用してはいかがでしょうか。

 医療費は、皆さんが医療機関で支払う負担金の他に、国民健康保険、健康保険組合などの各保険組合の保険料や、税金で賄われています。超高齢社会となった現在、医療費は年々増えています。医療費を抑えるためにも、ジェネリック医薬品という選択もあるのではないでしょうか。


先頭へ