ほっとホスピタル 病と健康
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第37回 末梢動脈疾患
第36回 脳卒中予防のための血圧管理
第35回 尿路結石症
第34回 骨粗しょう症
第34回 大腿骨近位部骨折
第33回 スキン‐テア(皮膚裂傷)
第33回 低温熱傷
第32回 そけいヘルニア
第31回 めまいを起こす病気
第30回 お薬との上手なつきあい方
第29回 帯状疱疹
第29回 足白癬・爪白癬
第28回 夏風邪
第28回 高山病
第28回 熱中症
第27回 足の病気
第26回 心不全
第25回 シェーグレン症候群
第24回 認知症
第23回 更年期障害
第22回 くも膜下出血
第21回 ウイルス性肝炎
第20回 心筋梗塞
第20回 狭心症
第19回 糖尿病の注意点
第19回 食後高血糖
第18回 肌のトラブル
第17回 前立腺の病気
第16回 脳梗塞
第15回 睡眠時無呼吸症候群
第14回 ピロリ菌
第13回 腸炎
第12回 スポーツ時の脳振とう
第12回 高齢者の慢性硬膜下血腫
第12回 子どもの頭部外傷
第11回 高血圧
第10回 口腔ケア
第9回 不整脈
第8回 消化器内視鏡検査でわかること
第7回 男性不妊症
第6回 肺炎
第6回 感染性胃腸炎
第6回 インフルエンザ
第5回 糖尿病
第4回 乳がん
第3回 野球肘
第2回 脳卒中にならないために
第1回 失神

第18回 肌のトラブル

肌のトラブル(上)~かゆみ~

2017.10.17
刺激避け保湿入念 かくと炎症強まり慢性化

【相談者】
 Cさん 67歳女性。ときどき体全体がかゆくなります。かくと余計にかゆくなり、かかずにはいられないことがあります。対策はありますか。

 かゆみでかくという行為は、生命を脅かす病原体からの攻撃などをかゆみとして認知し、皮膚をかくことで侵入を排除するという「生態防御反応」で自分の身を守ろうとして起きるものです。アトピー性皮膚炎などの病気や内臓疾患から起きるものもあります。かくことで皮膚が傷つき、それが悪化することでさらにかゆみが増すことがありますので、原因にあった対策をとって肌を守ることを心掛けましょう。

■皮膚の役割は?
 私たちの体を覆う皮膚は、人体の最大臓器と言われています。なぜならば体と外界との分ける境目にあり、体全体を包み込むことで防御壁(バリア)となっているからです。汚れや紫外線、ウイルスなどから体を守り、体内の水分が失われないように保つ役割があります。

 皮膚は、おおまかに表皮、真皮、皮下組織の3層に分けられています。表面の表皮の厚みはわずか0・06~0・4ミリ程度でフィルムのように薄いため、強くこすったりせず、優しく丁寧に扱うことが大切です。

(上)図1 皮膚の仕組み

 かかずにいられないのがかゆみですが、肌をかくことで皮膚の表面が荒れて、少しの刺激にも過敏になります。図で示したように慢性の肌荒れ状態になると「かゆみを感じる神経」が表皮の近くまで伸びてきて、かゆみを強く感じるようになります。そのような状態では、皮脂や汗の分泌が少なくなり、潤いを保つ成分も減っています。わずかな刺激でもかゆみを起こしやすい状態でさらに炎症が強まってしまい「かゆみの悪循環」に陥ります。

■注意することは?
 かゆみを引き起こす刺激には、食べ物や環境によるもの、加齢によるものなどがあります。ヒスタミンを多く含んでいる食べ物、表面に毛玉ができやすいような衣服も注意は必要です。

(上)表1 ヒスタミンが多く含まれている食べ物

 高温多湿の環境は、汗が出やすく量が増えて汗の通り道や出口が詰まり組織を刺激し、逆に冬の低温乾燥では、皮脂や水分を奪われることで刺激を受けやすくなります。年齢が上がると皮膚の老化がすすみ皮脂腺や汗腺の働きが低下し、皮膚の潤いが失われ乾燥しやすくなり、かゆみを感じやすくなります。

■潤い保つには?
 健康な肌の潤いの元になるのが水分であり、それを維持するのが油分です。トラブルのない肌になるには、まずは肌表面の薄い膜を守ることが重要です。

(上)表2 肌を守るには

 肌を守るには、皮膚を優しく清潔に保ち、お風呂では42度を超えない湯温になるよう調整しましょう。特に入浴直後の肌は潤っていますが、皮膚表面を覆う油膜が落ちているので、水分が急速に失われます。入浴後約20分で入浴前よりも皮膚の水分量が減少するといわれています。コラーゲンやヒアロルン酸、セラミドなどの潤い成分などが入っている保湿剤を入浴直後10分以内に使用することをお勧めします。


肌のトラブル(中)~乾燥~

2017.10.24
入浴後10分以内に保湿 過労や栄養不足も注意

【相談者】
 Aさん 50歳女性。 洗顔後に肌が突っ張る感じがします。特に冬になると肌がカサカサします。対策はありますか?

 肌に十分な水分が保たれているうちは、みずみずしい健康な肌でいられます。乾燥した状態で放置していると、皮膚の防御壁(バリア)機能が低下し、外からの刺激で肌が弱くなってしまいます。

 睡眠不足や栄養が偏った食事を続けていると、肌を作っている肌細胞に栄養が届かず、新しい肌細胞が生まれにくくなってしまいます。図1のように肌の生まれ変わりの周期が遅れて、肌の古い皮膚が落ちなくなり、「赤み」や「できもの」ができる原因となってしまいます。さらに細胞の生まれ変わりの周期が遅れてしまうと、潤いをつくる成分も少なくなってしまい、さらに肌が乾燥してしまいます。

(中)図1 皮膚の生まれ変わる周期

■原因は?
 乾燥肌の「原因」としては、主に以下の五つが挙げられます。

 【季節】秋や冬に乾燥肌になってしまう人は、空気の乾燥や気温低下の影響を受けています。冬の乾燥した空気にさらされると、肌に溜めていた水分が逃げてしまいます。暖房などで夏や春などのシーズンに比べ空気中の水分量が減り、潤い不足になってしまいます。

(中)図2 入浴後の角質層の水分量

(中)図3 入浴前後の肌の潤い

 【入浴】図2や図3に示した通り、肌は入浴後20~30分で、入浴前より乾いた状態になります。入浴は「漬かるリスク」と「洗うリスク」の二つのリスクがあります。お湯に長時間漬かっていると、皮膚がふやけて、肌の潤い成分が流れ出てしまいます。そのため、入浴後は入浴前よりも乾燥しやすい状態の肌になってしまいます。体を洗うときに、ボディーブラシなどで強くこすったりして強い刺激を与えると、肌の表面が傷ついてしまいます。

 【過労やストレス】過労やストレスは自律神経が不安定となり、肌のトラブルを引き起こします。ホルモンのバランスも崩れるため、肌の生まれ変わりの周期にも影響を及ぼします。

 【栄養不足】偏った食生活は肌にも悪影響を及ぼします。必須脂肪酸やビタミンAなどの栄養素不足も、乾燥肌の一つの原因と考えられています。

■保湿ケアは?
 入浴するときには42度より低い湯に漬かり、体を洗うときはせっけんをよく泡立てて手で優しく洗うようにします。入浴後10分以内には、保湿剤を塗りましょう。特に肌が乾燥する部位は、ひじやかかと、ひざが乾燥しやすい部位といわれています。

 個人の好みもありますが、夏は乳液やローション、冬はクリームや軟こうなど、種類を変えて使うこともお勧めします。加齢により弾力が低下している肌は、“ささいな力”で傷つきやすいので、保湿成分を含んだ乳液やローションが浸透しやすいと思います。

 乾燥肌は一日で改善できるわけではありません。毎日のこまめなケアでしっとりとした肌を保つことができます。正しい保湿ケアを取り入れて乾燥スパイラルに陥らないようにしましょう。


肌のトラブル(下)~スキンケア~

2017.10.30
保湿剤で乾燥防いで 潤い保ち老化遅らせる

【相談者】
 Kさん 45歳女性。季節の変わり目の影響なのか肌荒れがあり、なかなか治りません。肌の潤いのために、日頃から気をつけなければならないことはありますか。 

 肌の潤いを守るためには三つの要素があります。(1)肌の水分(2)肌の油分(3)肌の水分と油分のバランス、この三つのどれが欠けていても、健康な肌を保つことはできません。

 肌は気温や湿度といった外的な要素に反応しやすく、水分量で肌の質は変わります。季節によって変化する肌の状態にも注目してみてください。皮膚の油分を取り除きすぎると、乾燥肌になります。皮膚の防御壁(バリアー)機能の保たれたバランスの取れた状態を保ちましょう。

■季節ごとの対策は?
 気温が変化しやすい春は、肌荒れや吹き出物ができやすくなります。花粉などでアレルギーが起きやすい時期です。乾燥していた冬の肌へのダメージが現われやすく、また急激な気温変化が肌の新陳代謝を乱し、暖かくなったことで皮脂の分泌が盛んになることなども原因です。

 春の強い紫外線が急に肌に当たると皮膚が過敏に反応することがあるので、保護するために日焼け止めを使うようにしましょう。

 夏には紫外線対策が欠かせません。日焼け止めなどによる肌の負担が気になる人は、帽子や日傘の使用がお勧めです。皮脂の分泌量が増えることで、化粧が崩れやすくなります。汗と皮脂、メークが混ざり合って肌が不潔になりがちなのでトラブルが起きないように清潔にしましょう。最近はエアコンの影響で夏でも乾燥肌になる可能性があります。しっかり保湿してください。

 暑い夏に受けた紫外線の影響や温度変化で痛め付けられた肌が、元気な状態に戻すことができる良い季節が秋ですが、冷たい風が吹き始めると肌荒れなどのトラブルを引き起します。皮膚表面をケアし、肌の生まれ変わりの周期を乱さないこと、そして冬の到来前に肌のバリアー機能を高めるための保湿が重要です。

 冬は乾燥した空気と暖房によって、肌の水分が奪われてしまいます。乾燥した空気は、夏の紫外線と同じくらい肌の老化に大きな影響を与え、暖房の温風や冷たく乾いた外気は、肌をひどく乾燥させてしまうため、最も注意が必要な季節です。肌にとって理想的な湿度とは60~65%といわれていますが、冬になると50%前後にまで下がります。こまめに水分を補い、保湿剤などで乾燥を防ぐことが大切です。

■洗い方は?
 近年、年間を通してエアコンなどの空調が効いているため、どちらかというと一年中乾燥肌の人が多いようです。常に健康な肌を守るには、きめ細かな泡で洗浄して清潔にし、保湿して保護してください。きめ細かな泡だと、毛穴の奥の汚れでも包み込み、泡の力で汚れを落とすことができます。

■気を付けることは?
 保湿をするときに気を付けていただきたいことがあります。保湿剤は、指先の関節一つ程度の量を、両手ぐらいの面積に塗るようにしてください。ポイントは、皮膚のしわの方向に沿って優しく塗ることです。塗った後に皮膚表面にティッシュペーパーが付着する程度が良いといわれています。健康な肌と同じ弱酸性成分の保湿剤が適しています。乾燥肌になりやすい人は、1日2回~数回塗ることをお勧めします。

(下)図 使用量の目安

(下)図 塗り方ポイント

 潤いを保ち続けることで肌の老化の速度を遅らせることにつながります。日々の習慣の積み重ねが、そのまま皮膚に現れます。毎日のスキンケアで潤いのある健康な肌を保ち続けましょう。


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