ほっとホスピタル 病と健康
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第36回 脳卒中予防のための血圧管理
第35回 尿路結石症
第34回 骨粗しょう症
第34回 大腿骨近位部骨折
第33回 スキン‐テア(皮膚裂傷)
第33回 低温熱傷
第32回 そけいヘルニア
第31回 めまいを起こす病気
第30回 お薬との上手なつきあい方
第29回 帯状疱疹
第29回 足白癬・爪白癬
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第28回 高山病
第28回 熱中症
第27回 足の病気
第26回 心不全
第25回 シェーグレン症候群
第24回 認知症
第23回 更年期障害
第22回 くも膜下出血
第21回 ウイルス性肝炎
第20回 心筋梗塞
第20回 狭心症
第19回 糖尿病の注意点
第19回 食後高血糖
第18回 肌のトラブル
第17回 前立腺の病気
第16回 脳梗塞
第15回 睡眠時無呼吸症候群
第14回 ピロリ菌
第13回 腸炎
第12回 スポーツ時の脳振とう
第12回 高齢者の慢性硬膜下血腫
第12回 子どもの頭部外傷
第11回 高血圧
第10回 口腔ケア
第9回 不整脈
第8回 消化器内視鏡検査でわかること
第7回 男性不妊症
第6回 肺炎
第6回 感染性胃腸炎
第6回 インフルエンザ
第5回 糖尿病
第4回 乳がん
第3回 野球肘
第2回 脳卒中にならないために
第1回 失神

第8回 消化器内視鏡検査でわかること

消化器内視鏡検査で分かること(上)

2017.1.31
胃がんを早期発見 鼻から通し苦痛軽減

【相談者】
 Aさん 55歳男性。毎年住民健診でバリウムを飲んで胃の検査を受けてきました。これまでは何もなかったのに、今回の検査で異常があったらしく「2次検査を受けてください」とお知らせが来ました。胃がんになったのでしょうか。生まれて初めて胃カメラを飲まないといけないみたいなのですが、怖くてどうしようかと困っています。

 日本人の死亡原因は、心臓病や脳の疾患を抑えて、がんを含む悪性新生物がトップで、5人に1人がこれが原因で亡くなります。中でも胃がんは罹患率(その病気にかかる頻度)が大腸がん、肺がんに次ぐ第3位で、死亡率(その病気で死亡している人の頻度)では大腸がんに次いで第2位と、大変多くの人がかかる病気です。

■発見の割合は?
 胃がんはバリウム検査によって、千人に約1人の割合で発見されています。バリウム検査で2次検査を受けた方がよい「要精検」と判定されるのは10人に1人くらいです。従って「2次検査を受けてください」とお知らせがきた人の100人中1人ぐらいが、胃がんにかかっている可能性があるという計算になります(表)。

(上)表 胃がん検診全国集計

 胃カメラは怖いと思われるかもしれませんが、もっと怖い胃がんを発見するためにはぜひ2次検査を受けるようにしてください。ちなみに、初めから胃カメラで胃がん検診を受けた人たちの胃がん発見率は千人に2人ぐらいとなっています。

■胃カメラとは?
 胃の2次検査で通常行われるのは胃カメラ(内視鏡検査)です。昔は内視鏡が太くて、のどを通りにくく、確かに大変な苦痛を伴う検査でした。しかし最近では技術の進歩により内視鏡がずいぶん細くなり、「経鼻内視鏡」と言って、口から飲んでいた管を鼻から通すことができるようにもなってきました。

(上) 経鼻内視鏡を使った検査

 口から内視鏡を入れると、舌の奥を通るときに「オエッ」となり、つらい経験をした人が少なくないと思います。鼻から入れることによって、この「オエッ」となることがほとんどなくなり、以前より楽になりました。内視鏡の太さは5~6ミリなので、太めのうどんくらいです。のどを通っているときも違和感が少なく、口がふさがれないので検査中に話をすることもできます。

(上) 内視鏡カメラの大きさの比較

写真:内視鏡カメラの大きさの比較。鼻から入れるカメラはうどんの太さとほぼ同じ

■開腹手術は必須?
 胃がんは症状が出てからの進行がんの状態だとお腹を切る手術をしなければならない可能性が高くなります。胃がん全体では半分くらいの人が亡くなられていますが、早期がんの状態で見つかれば90%以上の人が命を落とすことはありません。しかも、開腹手術を受けないで、内視鏡で切り取る(内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術)治療で済む場合もたくさんあります。

 ぜひ明日にでも、胃カメラ(内視鏡検査)のできる病院や消化器内科などの診療所を受診して2次検査を受けるようにしてください。    


消化器内視鏡検査で分かること(中)

2017.2.7
初期の大腸がん切除 検査は平均15~20分

【相談者】
 Bさん 男性45歳。毎年職場の健診で便潜血検査をしています。今まで異常なかったのに今回初めて陽性反応が出てしまいました。大腸がんの可能性があるのでしょうか。2次検査や精密検査を受けたいのですが、どうすればよいでしょうか。

 日本人が最もたくさん命を落としているがんが大腸がんです。かつてがんの中で最も亡くなる人が多かったのは胃がんだったのですが、食事の欧米化などにより大腸がんが増えて、今では胃がんを抜いてトップになっています。

■便潜血とは?
 大腸がんの多くは、小さな良性のポリープができて次第に大きくなり、悪性度が高まり、最終的にがんになると考えられています。ポリープがある程度の大きさになると、便が通るときに表面がこすれることにより血液が付着する可能性があります。がんになっている場合は常時出血していることが多いので、まず間違いなく血液が便に付着します。便潜血検査が陽性になる可能性は極めて高いと言えます。

 大腸の2次検査の多くは、胃と同様に内視鏡による検査で行われます。小さなポリープでも見つけることができます(写真(1))。胃カメラのものより少し長い専用の内視鏡を肛門から入れて、大腸の中を逆行するように進めて観察します。

(中) 内視鏡検査で見つかった大腸ポリープ

写真(1):内視鏡検査で見つかった大腸ポリープ

■検査前の準備は?
 検査のためには少し準備が必要です。胃の中は、朝食を食べなければほぼきれいに空っぽの状態ですので、観察することは容易です。一方、大腸の中は、朝ごはんを食べていないだけでは前日までの食事による便がたくさん残っていて、内視鏡で詳しく観察することはできません。従って、検査の前には便をすっかり洗い流しておく必要があるので、前日の夜と当日に下剤を飲む必要があります。検査にかかる時間は15~20分くらいです。

 日本人の大腸の長さは平均すると1・5メートルほどですが、格好や形は個人差が多いので、検査にかかる時間や大変さもいろいろです。おなかの手術を受けたことがある人や、ひどい病気になったことがある人は、大腸がくっついたりしていて内視鏡が通りにくいため、検査時間が長くかかる場合もあります。

 ポリープの状態もしくはポリープががんになったばかりの状態で大腸の病気が見つかれば、内視鏡で切り取る(内視鏡的粘膜切除術)ことができます(写真(2))。しかし、便潜血検査が陽性にもかかわらず2次検査をせず放置していると、進行した大腸がんとなってしまうことがあり、内視鏡治療ができず手術をしなければならなくなります。

(中) 内視鏡的粘膜切除術

写真(2):内視鏡を使ってポリープや初期のがんを切り取る「内視鏡的粘膜切除術」

 がんのできた場所によっては肛門も取り除かなくてはならず、おなかに人工肛門を付けて過ごさなければならなくなってしまいます。最悪の場合、がんが既に肝臓や肺に転移をしてしまっていて、手術をしても治らないことにもなりかねません。

 明日にでも病院や消化器内科を専門としている診療所に行って2次検査を受けるようにしてください。


消化器内視鏡検査で分かること(下)

2017.2.14
十二指腸もチェック 症状出る前にがん発見

【相談者】
 Cさん 65歳女性。先日伯父が「十二指腸ファーター乳頭部がん」という病気になって手術を受けました。膵臓(すいぞう)や胆のうも一緒に取ったらしく、10時間以上もかかった大手術だったそうです。私は毎年人間ドックを受けていて、胃のバリウム検査や便潜血検査で異常が見つかったことがないので、胃腸の病気は大丈夫だろうと思っていましたが、伯父の話を聞いた上に、時々みぞおちのあたりが痛いこともあり、心配になってきました。

 胃につながっているところで、小腸の一番始めの部分を十二指腸と言います。人の指の幅12本分くらいの長さの腸なので十二指腸という名前が付いています。

■位置は?
 ファーター乳頭部は、十二指腸のちょうど真ん中くらいのところにあります。肝臓で作られた消化液が流れてくる胆管と、膵臓で作られた消化液が流れてくる膵管が合流して、腸に流れ出す出口に相当する部分になります。この乳頭部に生じるがんを十二指腸ファーター乳頭部がんと言います。

(下) 内視鏡カメラで見たファーター乳頭部

写真:内視鏡カメラで見たファーター乳頭部

 初めに出る症状としては、みぞおちの痛みもありますし、眼球が黄色くなる黄だんと言われるものがあります。黄だんは進行すると皮膚の色まで黄色くなり、おしっこの色も濃くなります。

 黄だんに気が付かないまま、あるいは気が付いていても痛みがない場合はつらくないので、しばらく様子を見ていたりしていると、胆管炎という感染症を併発して高い熱が出たり、膵炎を起こして猛烈な腹痛が生じることがあります。

■治療は?
 治療はファーター乳頭部のある十二指腸を切除する手術です。やっかいなことに、十二指腸には胆管と胆のうや膵臓がくっついているので一緒に取らなければなりません。かなり大掛かりな手術となるので時間もかかることになります。この手術を膵頭十二指腸切除術と言います。

 同じ手術を行う病気として代表的なものに、最近増えてきている膵がんがあります。膵がんは手術をしてもなかなか根治することは難しい病気ですが、ファーター乳頭部がんはそれに比べると治る場合が比較的多いがんです。

■発見には?
 症状のない早期の十二指腸ファーター乳頭部がんは、内視鏡検査で行われる胃がん検診で偶然見つかる場合があります。胃がん検診は胃の病気を見つけることを主体としていますので、必ずしも十二指腸ファーター乳頭部も観察しているというわけではありませんが、一般的に内視鏡検査を行う医師は、多少時間が余計にかかっても十二指腸までをチェックするように心掛けています。

 あまり多くはない病気ですが、心配な人には胃がん検診をバリウムではなく内視鏡検査で行うこともお勧めします。仮に今の症状が治まったとしても、次の胃の検査は内視鏡による方法を選択してみてはどうでしょうか。

(下) 消化器内視鏡検査

写真:胃から十二指腸まで調べる消化器内視鏡検査


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