人工股関節置換手術(Total Hip Arthroplasty, THA)
当院では9割以上の方に仰臥位前方アプローチ(Direct Anterior Approach, DAA)による手術を行っています。この手術法の特徴は、術後の回復が早く(最近の平均入院期間は17日)、脱臼率が低いことです。
病気の原因
この手術が必要となる主な病気として、変形性股関節症と関節リウマチがあります。
変形性股関節症は元々股関節脱臼や臼蓋形成不全(大腿骨頭に対する骨盤の骨のかぶさりが少ないこと)などの骨の形態の異常によって年をとるに従って関節軟骨が磨り減ってくる病気であり、関節リウマチは股関節の潤滑油に当たる関節液を作っている滑膜が炎症を起こし、軟骨がだんだんと溶けてしまう病気(化学的に関節軟骨が溶けるようなイメージ)です。

正常

変形性関節症

関節リウマチ
股関節の症状
(1)関節に痛みが生じる
痛みの部位は股関節近くだけでなく、大腿部、膝付近などに感じる場合もあります。
まず立ったり座ったりや階段の昇り降りの時に痛みを生じることから始まり(第1段階)、次に平 らなところを歩いている時にも痛むようになり(第2段階)、もっと悪化するとじっとしているときや夜寝ているときにも痛むようになります(第3段階=末期症状)。
痛みの部位は股関節近くだけでなく、大腿部、膝付近などに感じる場合もあります。
まず立ったり座ったりや階段の昇り降りの時に痛みを生じることから始まり(第1段階)、次に平 らなところを歩いている時にも痛むようになり(第2段階)、もっと悪化するとじっとしているときや夜寝ているときにも痛むようになります(第3段階=末期症状)。
(2)動きが悪くなる
曲がらなくなる(和式トイレが困る、靴下が履けない、など) 脚が開かなくなる(排尿時に大腿部内側が濡れるなど)
曲がらなくなる(和式トイレが困る、靴下が履けない、など) 脚が開かなくなる(排尿時に大腿部内側が濡れるなど)
(3) 跛行
痛み、筋力低下、下肢長短縮などによる
痛み、筋力低下、下肢長短縮などによる
治療
いずれの病気でも、まず手術をしない治療(内服薬、湿布などの外用薬,リハビリなど)を行います。しかしこれらの治療で改善せず、関節軟骨がかなりなくなって骨同士で擦れ合うぐらいに関節が痛んでしまい、かつ強い痛みを伴う場合、痛みをとる目的で行う治療が人工股関節置換術(Total Hip Arthroplasty, THA)です。
手術によるメリット
痛みがほとんど取れる
動く範囲が維持されるか多少良くなることが多い(開く動きが良くなることが多い)
手術によるデメリット
手術創周囲の違和感が残る
重いものを持つ、農作業をするなどの重労働を控える必要がある
手術方法
股関節前外側を7~12センチ切開します(以前ほかの手術を受けているなど皮膚の状態によって多少変わる場合があります)。擦り減ったり溶けたりした骨盤、 大腿骨の軟骨を切除し、骨盤側は金属製の部品に高分子ポリエチレンを乗せたものを、また大腿骨側は金属製の部品を設置し、この2つの部品をはめ込みます。



後療法(リハビリテーション)
手術の前からリハビリを始めます。手術前は現在の状態の評価、筋力増強訓練、術直後の運動指導、などを行います。手術後は主に以下の運動を中心にリハビリが進みます。
(1)筋力をつける練習
膝を伸ばしたまま下肢全体を持ち上げる練習(SLR),膝に力を入れて伸ばす練習などがあります。筋力がないと力が入らず歩けないので、手術翌日からでも練習を始めます。
膝を伸ばしたまま下肢全体を持ち上げる練習(SLR),膝に力を入れて伸ばす練習などがあります。筋力がないと力が入らず歩けないので、手術翌日からでも練習を始めます。
(2)関節を動かす練習
(3)生活動作練習
歩行が上手になってくるにつれて階段、床からの立ち上がりなどの自宅で生活するための練習が加わります。
大まかな日程としては、手術翌日から歩行器での歩行練習、2日目からリハビリ室へ行って歩行練習、1~2週で一本杖を使っての歩行、となり、手術後約2~3週で退院となります。
歩行が上手になってくるにつれて階段、床からの立ち上がりなどの自宅で生活するための練習が加わります。
大まかな日程としては、手術翌日から歩行器での歩行練習、2日目からリハビリ室へ行って歩行練習、1~2週で一本杖を使っての歩行、となり、手術後約2~3週で退院となります。
退院後の注意
通常の生活や旅行などは差し支えありませんが、かなり負担のかかることは人工関節部品の磨り減りや緩みにつながります。農作業をする、重いものを持つなどの重労働は控えたり、体重が増えたりしないように注意しましょう。また人工関節がいたんでくる場合(15年間で約1割に入れ替え手術が必要になる)は痛みを伴うことが多いのですが、痛みを伴わない場合もあるので、少なくとも年に1回は定期的に受診し、人工関節の定期点検を受けましょう。
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